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「……結…婚?」
咄嗟に声が震える。
さっきまで火照っていた身体の熱も、一気に引いていく。
「彼ね、五年前に東條の社長令嬢と結婚したんだって。あたしも前にここで働いていた先輩から聞いたから、詳しくはよく知らないんだけど……」
彼女の話によると、副社長はもともと本社勤務の一社員で、敏腕営業マンと社内で名高い存在だったそうだ。
世界的に知名度の高い大企業ばかりにアプローチをかけては、契約を次々と手中に収め、入社からたった二年で会社の業績を倍にした彼に、東條グループの会長が目をつけた。
会長には孫娘が一人いるが、巨大な東條グループを継ぐ気は彼女にはなく、東條の将来を任せられる“婿”がどうしても必要だったのだ。
もともと野心家だった彼もすんなりと“婿入り”という条件を受け入れ、現在に至る。
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