一億のキス

終わる恋 -side 菜月-

彼女の話を聞いていて、なんとなく副社長の人柄が見えてきた。

つまり彼は、言葉は悪いけれど、出世と引き換えに自分の身を売ったのだ。

会ったこともない会長の娘との結婚を何の躊躇いもなく受け入れた彼を、私は少し怖いとも思った。

出世のためなら、彼は手段を選ばないのだろう。

そんな彼らの結婚生活に、おそらく愛は存在していないはず。

勝手な想像だけれど、私はなぜか変な自信があった。