合鍵。

6/15
前へ
/128ページ
次へ
 僕らの胸の奥にある共通の思い出たちは、いつからか錆びてしまったようで、おはよう、と交わしたきり大した会話もなく同じ朝が流れる。  僕と彼女は同じドアから出て行くのに、いつからか彼女が帰るのは違うドアの、僕ではない人が待つ部屋。  そんな日々に耐えきれず、僕は言った。 「僕たちもう終わりなのかな?」  だけど決着を問えば出てくる答えはいつも同じで、 「…まだ一緒にいようよ。 最近、雑誌の星占いで恋愛運が最悪だから。 そ、そんなの関係ないと思うけど...」 「…そうなんだ...」  星占いも信じないような恐がりな僕らはきっと、これから先も1人になることを恐がって、こんなやりとりを繰り返しては本音を胸に忍ばせていくのかな。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加