◆はじまり◆

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【1】  初めに縁を戴いたのは、式場アシスタントの仕事だった。 もちろん資格も必要な仕事だから見習い三ヶ月。 これはどこの仕事でも同じ。 何をするのかというと、いわゆる葬儀の司会進行。 でもこれはもうベテランのお話で…。 まぁそうだな…。 葬儀の脇を支える裏方、お手伝い?そんな感じの仕事内容だったな。 その道のベテランの女性を講師にして、あちらこちらの自宅葬やら公営の式場などを周った。 「おい、唯月!!」 「はい」 「おまえ、タバコ吸っただろ!!」 私たちの新人グループを面倒見ていたベテランA女史に、研修間もない頃こんなことを言われたっけ。 もちろん、見に覚えなんかないわけで。 「やめてくださいよ、なんですか?いきなり(苦笑)」 「女子トイレに、タバコの吸殻が落ちていた」 「それがなんで私なんですか…」 「吸いそうだから」 『おいおい…』 こんな感じの、どこかめちゃくちゃなことを言う先輩方が多かったな。 まだ葬儀会社も、昔の雰囲気を持っていたから、こういうタイプの人も沢山いた。 今はもっとなんというか…研修システムみたいなものも出来上がっていて、学校の様だから。 でもね、こういう雰囲気を持った人たちだから温かみというか…、ふところに入ってしまうと優しかったするのだけれども。 中途採用で一緒に入った仲間は8人。 でも研修中にどんどん辞めていく。 そりゃそうだ…。 何も知らずに入って、いきなり他所様の亡骸とご対面。 承知はしていても、仕事にするとなれば色々あるのだ。 「私は大丈夫」 と思っていても、そこには身内の葬儀でナーバスになっている家族もいる。 人の感情に共鳴しやすい人には辛い仕事かもしれない。 気がついたら、仲間は3人に減っていた。
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