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【1】
初めに縁を戴いたのは、式場アシスタントの仕事だった。
もちろん資格も必要な仕事だから見習い三ヶ月。
これはどこの仕事でも同じ。
何をするのかというと、いわゆる葬儀の司会進行。
でもこれはもうベテランのお話で…。
まぁそうだな…。
葬儀の脇を支える裏方、お手伝い?そんな感じの仕事内容だったな。
その道のベテランの女性を講師にして、あちらこちらの自宅葬やら公営の式場などを周った。
「おい、唯月!!」
「はい」
「おまえ、タバコ吸っただろ!!」
私たちの新人グループを面倒見ていたベテランA女史に、研修間もない頃こんなことを言われたっけ。
もちろん、見に覚えなんかないわけで。
「やめてくださいよ、なんですか?いきなり(苦笑)」
「女子トイレに、タバコの吸殻が落ちていた」
「それがなんで私なんですか…」
「吸いそうだから」
『おいおい…』
こんな感じの、どこかめちゃくちゃなことを言う先輩方が多かったな。
まだ葬儀会社も、昔の雰囲気を持っていたから、こういうタイプの人も沢山いた。
今はもっとなんというか…研修システムみたいなものも出来上がっていて、学校の様だから。
でもね、こういう雰囲気を持った人たちだから温かみというか…、ふところに入ってしまうと優しかったするのだけれども。
中途採用で一緒に入った仲間は8人。
でも研修中にどんどん辞めていく。
そりゃそうだ…。
何も知らずに入って、いきなり他所様の亡骸とご対面。
承知はしていても、仕事にするとなれば色々あるのだ。
「私は大丈夫」
と思っていても、そこには身内の葬儀でナーバスになっている家族もいる。
人の感情に共鳴しやすい人には辛い仕事かもしれない。
気がついたら、仲間は3人に減っていた。
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