取調室

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「ええい!五月蝿いぞ貴様!」 乾いた破裂音が鳴った。 撃ったのは警部だ。 右手に握られたピストルからは煙が出ている。 椅子から滑り落ち、口をあわあわとする山田。 「あちゃー。ゴメンゴメン。つい」 テヘッと舌を出して謝る警部。 「ついじゃねぇよ!!」 山田は立ち上がって穴の空いた机を叩いた。 「ほらでも、こういうことってよくあるだろ」 「ねぇよ!!」 「いやぁ、カッとなると人を殺したくなる癖があってね」 「お前警察辞めろ!!」 「うん、わかった辞める。じゃあね」 警部はドアノブに手を掛けた。 「辞めんのかよ!!」 「警察辞めてポリスになる」 「一緒だよ!! 二度手間だよ!!」 山田の忠告を余所に警部はドアを開けて出ようとしたが、すぐに目をぎょっとさせて後退りした。 「うわっ、何ですかあなた!!」 ドアの向こうに立っていたのは、岩のようにゴツゴツした図体だった。 「虎殺かつみです」 やけに恐ろしい苗字の人がまた一人増え、山田は穴の空いた机を今まで以上に強く叩いた。 「……マ、ママン」 それからすぐに山田は自白し、事件は解決した。 警部は警察を辞めてポリスになり、警部になった。 熊殺しずかは七百人もの人を殺害し、ビルを九百棟爆破し、国宝を盗み、百六十ヵ国に不法入国し、銀行から千三百億円も騙し取ったが見事に無罪を勝ち取った。 一同は事件が丸く収まったように思えた。 しかし、巡査の右肩にニキビが出来たことは誰も知るよしもなかった――。
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