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「君が、薄野海斗くんかね?」
何十回目かの電話をかけようとしたとき、その爺さんはやってきた。
赤い服に帽子、白い髭、そして馬鹿みたいにでかい袋。
紛れも無い十二月のスター、サンタクロースのご登場だ。
小肥りの西洋系のその爺さんはニコニコしながらやって来て、俺の前で止まる。
人違いだと思うことにして無視をしてみる。
「君が、薄野海斗くんではないかと思うのだが?」
あぁ、面倒臭いなぁ。
大体、サンタクロースが立派な大人に何の用があるっていうんだ。
「……何かご用でしょうか」
すると、彼はお決まりのビッグスマイルを見せて嬉しそうに言った。
「そうかね、やはり君だったか。
随分と急いでどこかに行ってしまったようだから、探すのが大変だった」
「私を探してたんですか?」
サンタがまだ飛び切りの笑顔のまま頷く。
「そうじゃよ。
そこらじゅう探し回っておった。
でも、ワシは勘がよくてな。
ここにいるんじゃないかっていう見当はすぐついたよ」
なんだ、この爺さんは。
話を聞くぶんだと、爺さんは俺を探して歩いていたのだ。
俺は爺さんが誰だか分かりもしないのに、相手は俺を知っている。
いささか気味が悪い。
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