プロローグ

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その日、 いつもは口数が少ない彼女が、珍しく流暢に言葉を紡いでいた。 ――ねえ、キョウ。 ――…なんだよ? ――私、歌うわ。 ――? 彼女は、遠くを見つめているようで。 ――自分の為だけじゃなくて、人の為にも歌えるようになる。 ――なんだよ、急に。 ――最近、お母さんが泣くの。お父さんは、怒るの。 ――…? ――先生は、下を向くの。ユキちゃんは、文句を言うの。ミュウは叩くの。サキコは、人をいじめるの。 ――…。 彼女の言っていることが、 分からないわけではなかった。 ――みんな、笑わないの。 ――そう、かも。 ――それに何より。 ――? ――キョウが、歌わなく、なっちゃった…。 ――…! ――だから、私は、歌う。 ――…頑張れ。 ――うん、頑張る。 共に声を合わせ歌ったのは、 この過去よりも更に昔のこと。 ,
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