第零章 プロローグは何時だって黒のようです

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『どうして………?』 私を汚物でも見るかの様に見下すのは私の元恋人。彼は愛刀に付着した紅い液体………いや私の血をピチャピチャと舐める。その紅水が刀から消えたのを確認すると鞘にそれを収めた。 『………相も変わらず美味なる純血よ』 『アナタ………どうして………?』 息が出来ない………。口から血が逆流する。 お腹からも凍てつくような激痛が……あぁ、そういえば刀で貫かれたんだった。 『主の神力が必要だったからじゃ。殺るつもりではなかったが致し方ない』 冷徹な金色の瞳で私を見つめる男。 その左手には淡い翡翠色の光球。私の力を無理矢理吸い取った封印珠なのだろう。 封印珠は個人の属性によって色素が変わる。 つまり翡翠なんて珍しい属性色、私以外に出せる神などいないのだから。 『信じてたのに………!』 …寒い。ギリギリと歯を食い縛りそう吐き捨てる。 血は止まりそうにない。寧ろどんどん溢れ出てくる。 『私はヌシを信じたこと等これまで一度足らずもない』 その言葉に脳を叩きつけられたかの衝撃を受けた。 ある意味、刀を突き刺された傷口よりもキツイ痛みを感じたのかも知れない。 目が………開けられそうにない。もう何も見えない。 私の体は既にボロボロだ。 身心裏切られた者には死がお似合いだということだろう………。 そう考えると何故だか笑いが込み上げてくる。 視界が黒に染まる。鮮明に覚えているのは眼を閉じた後頬を流れる涙の感覚だけであった。
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