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序章
これはこの国にある絵本の物語。
ずうっと昔のお話です。
この世界を、父となる神様から与えられた1人の女神さまがいました。
女神さまには、父となる神様から世界を良くするためにお手伝いとして、男の子の天使が側にいました。
男の子の天使は双子で、弟の方でした。
お兄さんの天使の方は、とても強くて輝いていて、弟の天使にも、どんな生き物にも優しくて、弟の天使は本当にお兄さんが大好きでした。
けれど、弟の天使が世話をする女神さまと、世界が揺らいでしまうような、それは"大きなケンカ"をしてしまいました。
父となる神様は、お兄さんの天使だけを怒って、とてもとても冷たい大地の下にある氷の世界に閉じ込めてしまいました。
弟の天使は、沢山泣きました。
お兄さんと同じ空色の瞳から、ポロポロと沢山の涙を流しました。
弟の天使を心配して、優しい天使や、逞しい天使が慰めましたが、涙を止める事が出来ませんでした。
それほどお兄さんの事が、本当にとても大好きだったからです。
ただ、泣きながらも女神さまのお世話や、お手伝いはキチンとしました。
弟の天使は、《自分がしっかりしていれば、父なる神様が、ケンカをしてしまったお兄さんを許してくれて、いつか会わせてもらえる》と信じていたからです。
長い時間が過ぎました。
女神さまはいつの頃からか、世界に住む人達から『大地の女神』と呼ばれるようになっていました。
ただ、女神さまと、弟の天使の男の子はどれだけ長い時間一緒にいても、仲良しになれていませんでした。
その為かどうなのか、人間同士の諍いや争いが絶えなくて、寧ろ増えていたりしていました。
世界を形造る手伝いをしてくれる精霊達が、騒いだりして、世界は落ち着きませんでした。
そんな落ち着かない時間ばかりの世界に、1人の人間の旅人が、女神さまと天使の前に現れました。
天使は、とても驚きました。
その旅人は髪の色は鳶色ですが、瞳はお兄さんとそっくりな空の色に、お兄さんとそっくりな自信に溢れた「アッハッハッハッ」という笑い声を上げる人だったからです。
女神は、凄く嬉しくなりました。
旅人は明るくて優しくて、少しも押し付けがましくなく、女神に話しかけてくれました。
固く、頑なになっていた女神の気持ちを、ゆっくりと解していってくれました。
旅人は時にウサギのように跳ね回り、共に女神と大地に足をつけて歩いてくれました。
女神は旅人が共に歩いてくれている時、風に靡く旅人の鳶色の髪がフワフワした姿が、一番大好きになりました。
女神も天使も、旅人がいるときは互いに正直になる事が出来ました。
旅人を介して、女神と天使が仲良くなるにつれて、世界は平和に穏やかになっていきました。
"ずっとこんな日が続けばいいな"
女神も天使もそう思い、願っていました。
けれども、旅人は"人"なのでやがて命はつきます。
旅人は"西の最果て"という場所に向かうと言い残し、旅立ち、辿り着いたかどうか、天使と女神にはわかりません。
けれど、旅人が命の灯を燃やし終え、穏やかに眠りについたのだけは、精霊達の囁きでしりました。
女神は旅人が"眠って"から気がつきました。
旅人を愛している事に。
天使は旅人に学びました。
兄に会いたいのなら、役目を果たし、待っているだけではダメなのだと。
―――そして、世界の人々は、旅人に感謝しました。
争いが起こる度、旅人が魔法や知恵でもって、世の中を平和になるように力を尽くしてくれたから。
そして、この世界から女神は姿を消します。
"旅人に出逢う為、初めて出逢った場所へ向かいます"と言った言葉を残して。
天使も姿を消しました。
"――兄に会うために、天使の名前を、一つ捧げて、探す糧とします"と、こちらも不思議な言葉を残して世界から姿を消しました。
そして残った人々は、旅人に『英雄』という称号を捧げました。
そうしてそれから、世を安寧に導かんと活躍する「人」を、人々は英雄と呼び続けるようになりました。
そして、長い長い時間が過ぎて――――。
幾たびか大きな争いが起こり、
数百年安寧の時間が過ぎて、
また戦が起こりを繰り返し
この物語が始まる、『セリサンセウム王国』という国には、4人の英雄がいる事になっていました。
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