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『そういった面で、アルスの才能を伸ばしてあげられるだろう、どんな"人"より信頼出来る、貴方に託しました。
私の手元に置いたとしても、どうしても"人"の目がありますから』
"本当なら、自分の手元に愛弟子をおいておきたかったがおけなかった"
そんな悔しさの雰囲気を十分滲ませ、アルセンは吐露します。
『あの子は多分"国"を護る為には必要な才能を、今期の新兵の中で一番持っています。
ただ今の平和なダガ―・サンフラワー陛下の御世で"才能"を開花させる事が、アルスにとって幸せかどうかが、分かりません』
そして悲しそうに、アルセンはアルスの本当の保護者、それこそ兄の様な表情を浮かべて、不安も述べました。
「やれやれ、そこまで思い入れがあるなんて、もしかしてあの子は、アルセンの弟とかもしれないって、勘ぐってしまうよ」
曲がっていたもう一方の耳を伸ばしながら、呆れたようにウサギの賢者はアルセンを見つめます。
『おや、何故そんな風に感じられるのですか?、私の父は30年近く前に旅立っています。
絶対にありえませんが兄なら兎も角、17才のアルスを弟にする事は無理ですし、母上、母は、どんな事があっても、父一筋ですから無理ですよ』
アルセンは本当に驚いたらしく、アルスが弟の可能性が全く無いことを立証してから、不思議そうにウサギの賢者に尋ねました。
ただ、アルセンはアルスを"弟"と疑われた事に関しては、不快ではなさそうで、寧ろ血の繋がりがあるように言われた事は嬉しそうな節すら伺わせられます。
「アルセンは本当に、偶に、純粋で素直で、こっちを野暮な気持ちにさせてくれるよねえ」
と、賢者はボヤくように言いながらも、アルセンの質問に小さな口を開きました。
「アルセンにしてもアルス君にしても、2人とも"A"の文字が入っているからだよ。
一族で代表の文字を引き継いで、名付けるのは良くある事だ、アルセンのお父上もついているだろう」
金髪の美人な軍人は、ウサギの賢者の確認に納得がいった様子で、小さく頷き、綺麗な微笑を浮かべます。
『成る程、しかし残念な事に全くの偶然です。もしそんな"縁"が本当にあったなら、才能を伸ばすためと言えども、可愛い大切なアルスを、ひねくれた不貞不貞しいウサギの賢者殿の元に、配属なんてさせませんよ』
綺麗なものから極上の笑顔に変えて、アルセンは結構な事をウサギの賢者に向かってサラリと言ってのけました。
「アッハッハッハッ。それなら言わせてもらうけれど、新兵教育の時に"賢者"に関して、ボロクソに言っていたみたいじゃない?。
特にワシ、"ウサギの賢者"に関しては?」
椅子にふんぞり返り、ウサギの賢者が鼻をヒクヒクとさせながら、言葉の応戦を行います。
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