6人が本棚に入れています
本棚に追加
「失礼します。宜しいでしょうか?」
僕は、喉の奥からしわがれた声を絞り出す。
そしてから、襖の奥からの対応を待った。
暫くすると、襖に仕切られた部屋の奥から、ひどくしわがれた声が聞こえてくる。
「入れ」
一言。
質問に対し、肯定でも返答でもなく、命令。だが、そんなこともお構いなしに、僕は丁重に両手で襖をすっ、と開けた。
中を一瞥すると、そこは巨大な広間になっていた。下には畳が敷き詰められており、旅館の大広間を連想させる。
しかし、旅館の大広間とは対照的に、くつろぎを与える雰囲気ではなく、中にはぴりぴりとした擬音がお似合いの、少しばかり張りつめた雰囲気が漂っていた。
中にいたのは、七人。
一番奥の掛け軸の前に堂々と座っているのが、元老(ゲンロウ)。元老と呼ばれているものの、その本来の意味である国会に対しての功労などは、一切してはいない。それ以前に、政治家ですらなかった。
ここでは、それぞれを与えられた“尊号”で称す。ここでの最上敬称は、先程の元老である。
そして、その元老を挟むようにして、平行に二列、初老のいわゆるおじさんが、三人ずつ、そこに座っていた。元老に対しての敬意の表れなのか、皆、一様に頭を下げている。
シモツキ
そして全員、霜月の家紋が背中に描かれた着物を着ていた。
最初のコメントを投稿しよう!