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何気ない日の事だった。
大学生と名乗り、自由人生を謳歌しているボクにとって、転機と思えるニュースがあったのは。
「マジック・ザ・ギャザリングで大会やるらしいぞ」
古くからの友人ではあるが、高校時代は別の学校で過ごし(週一くらいで遊んではいた)大学で再び合流したサトルからの情報だった。
情報源は、『はみ通』という週刊ゲーム情報雑誌の一ページだった。
「TCG好きのお前なら知ってるんじゃない?マジック」
「マジ?知ってるも何も、高校時代バカハマったべ」
高校時代も大学進学を目標に勉学に励む傍ら、友人らに勧められ、小遣い、バイト代をすべてつぎ込むほどにハマったのが、マジックだった。
モバイルゲーム黎明期の時代に登場し、カードゲーム専門雑誌が出る程に隆盛を極めたのが、TCG(トレーディング・カード・ゲーム)だ。
天才数学者と謳われたアメリカ人が1990年代に開発し、アメリカでは特許を取得している。
世界初のTCGは20年経過した今も拡張セットが作られている。
世界規模のカード大会は、優勝賞金一億円に上り、日本で知らぬ者はいないであろう、『遊戯王』すらマジックを元にしている。
ボクも例外ではなくハマったが、周りにマジックをプレイする人がいなくなってしまった為、ここ数年は封印していた。
「なんか、雑誌によると、カードは向こうが用意してくれるらしいで」
「マジっく!?」
思わずしゃっくりすら出てしまう程に二度ビックリ。
カードゲームの知られざる弱点が、マネーゲームな部分だ。
強いデッキ(勝負に使うカードの束の事)を作るには、お金が必要で新作が出る度に箱買い(一箱二万はする)していた。
それでも足りず、一枚千円は下らないシングルカードを専門店で合計数百枚は購入しても、日本で一万位にも届かなかった。
一億得るには、一億つぎ込むくらいの心構えがないとダメなのが、カードゲームの知られざる弱点だ。
つまり、カードを用意してくれるという事は、プレイの感覚さえ戻せば、自分にもチャンスがある。という事だ。
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