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シャックリが止まらない異常な体験
病院は、いわば複雑なマニュアルで動いている行政機関、つまり市役所のようなもので。
ほとんどの医師は過去の前例やマニュアルを出ようとしないもの。
臨機応変の決断が下せるのは、何度も修羅場をのりこえてきた名医しかいない。
いい例が[シャックリ]で。
[シャックリ]は病気ではない。特効薬もない。
たから病院は極力無視の態度をとる。
看護師も何もしない。
でも、病院のどこかに必ず一人は、[シャックリ]が止まらない患者がいるんですよ。
私も大久保病院で、[シャックリ]が止まらない経験がありました。
とめたくても止まらない。水を飲んでも、胸を叩いても。
父も点滴を受けて、しばらく(2日めあたり)するとシャックリが止まらない。
最初は(誤嚥で)喉に何か詰まって、短くコンコン咳を飲んでガマンしているのかと思ったら。
違う。
シャックリが何度も出るのを抑えているのでした。
大久保病院では、また巡回中の武田医師を、私が引き留めて訴えた。
[シャックリが止まらないんですが]
すると武田先生、言うことが冷たくて。
[じきに止まりますよ]
でももう3時間以上もシャックリしつづけている。たまらない。
[では何でこんなにシャックリが連続するんでしょうか]
武田医師はふーんと考えて。
[頸動脈の神経が興奮してシャックリが連続してるんでしょう]
[では頸動脈の神経の興奮を抑えるにはどうしたらいいんですか?]
[冷やすか、押さえるか、どちらかですね]
[じゃあ冷やしてみます。看護師さんお願いします]
すると、担当もシャックリに同情してくれていた看護師さんだったので、
さっそく小走りに首に巻くアイスノンをもってきてくれた。
これで私のシャックリは止まった。
あとになって、武田医師は笑顔で私を訪ねて、
[また我流で治したみたいですね]と言ってくれた。
これが重要なことだが、
同じ大久保病院でも全員が武田医師のような臨機応変の判断ができる名医ではない。
看護師さんもさまざま。
もし別の医師だったら、私の訴えは無視された。
そのことを思うと、私自身の幸運を思わずにいられないのです。
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