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稲村まで来た時、なにか異様な殺気を覚えた。
(なんだ…)
危険を感じた永岡は、木立の中に身を潜めて村の様子を見る。
すると…
(こんな所まで官軍が…!)
永岡が見たのは、その小さな農村を包囲しようとする、官軍の兵隊たちだ。
しかもただの兵隊じゃない。
(あの様子じゃ、狼藉をはたらくつもりだな)
それは指揮官も何もいない、単独で動こうとしている兵隊およそ30人。
どこかの一個小隊崩れの官兵たち…といったところだろう。
「チィッ」
それを見た永岡は舌打ちをする。
今は一刻も早く城に駆けつけたいが、この村を放っておくわけにもいかない。
そう思ってはいるが、永岡は今一人だ。
一人で三十人も相手に、しかも腰の刀一刀で太刀打ちできるわけはない。
それでも見捨ててはいられない。
それが永岡…それに会津武士だ。
(俺がいなくても、嘉兵衛がいる…)
そう考えた永岡は腰の刀に手を伸ばすと、決死の思いで飛び出そうとした。
その時だった―――――
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