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永岡が茂みに隠れ、官兵の動揺が大きくなると同時に、そいつも動いた。
そいつは永岡が二人斬った場所から五間(約9メートル)ほど離れた茂みから飛び出した。
ちょうど永岡が飛び出した方向とは反対側から出てきたので、官兵の反応が遅れた。
「うぁっ!」
「何ごとだ!?」
そいつは風のように兵隊たちの間をすり抜け、次々に倒していく。
あちこちで悲鳴があがる中でそいつは全く動じることなく、確実に一人ずつ倒していった。
こうなれば兵隊たちもパニックになるしかない。
その中で永岡もどう動いたものか迷っていた。
(うかつに飛び出せば、あいつの邪魔にもなりかねんな…)
官兵を倒している以上、そいつは味方という事だ。
そう考えた永岡は、物陰で様子をうかがう。
やがて…
「退けっ退け退けっ!」
全体の三割以上の人数がのされたところで、頭目らしき男が逃げていった。
それに続き、他の約20人ほどの兵士も林から退却していく。
あとの約10人はいずれも永岡かそいつが倒した為、地面に倒れている。
「やれやれ…」
それを確認した永岡は茂みから出る。
するとそいつも、永岡の前に姿を現した。
「どうも、助太刀ありがとうございます」
「あんた、一体…?」
そいつの姿に永岡は驚いた。
(女子じゃないか…)
右顔に傷はあるものの、その姿はまさに女だった。
永岡が当惑していると、その女が口を開いた。
「失礼を。私は小林千絵と申します」
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