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永岡が斬った二人以外、全員が小さなうめき声をあげている。
「それなら、皆生きているのか」
と、永岡が呟いているそばで千絵は永岡が斬った二人のもとへ行く。
そしてその二人がすでにこと切れていると分かると、ひざまずいて合掌をした。
その姿を見た永岡はまた千絵に驚いた。
(一時は狼藉をはたらこうとした輩にそこまでするのか…)
驚きつつも、永岡は千絵に感心した。
「千絵さん」
「はい?」
気づくと永岡は千絵のすぐ横に同じく膝まずいた。
「拙者はこれから鶴ヶ城へ行かねばならない。
そこで頼みがあるのだが…」
と、永岡は二人の遺体を見る。
その目線で千絵は察した。
「はい。ちゃんと弔っておきます」
「かたじけないな」
そう言って立ち上がる永岡。
「なにぶん、今は時間がない。またいずれ、この礼はする。
何かあったら…」
と言いかけて永岡は少し考える。
考えた後で
「鶴ヶ城に訪ねてきてくれ。
永岡と言えば皆分かるだろう」
と言った。
永岡はまだ、鶴ヶ城を救う気でいたのだ。
その答えに千絵は少し暗い表情を浮かべ
「はい」
とだけ答えた。
その様子を見て少し疑問に思ったが、永岡は気にせず城へ走る。
そして城が見えるところまで来て初めて、千絵の表情の意味が分かった。
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