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「ちょっと、挨拶してるんだから、返したらどうなの?」
隣の金髪ツインテールが言うが、風見に対してと同様、二人は何も返さなかった。
それが余計勘に障ったのか、榊原は眉間にしわを寄せる。が、それ以上何かを口にすることはなかった。
風見は苦笑を洩らすが、榊原同様それ以上食い下がることはなく自席へ戻る。
その際、勅使河原が物言いたげに明良を見ていたが、彼はそれを見て見ぬフリをした。
それからはまた、習慣となりつつある日常だ。放課後までは――だが。
放課後、懲りずに風見が接触を持ちかけてきた。
接触と言っても、一方的なものだが。
帰ろうとする美姫に風見――とその取り巻きもといハーレム――が強引に「一緒に帰ろう」とついて行ったのだ。
それを厄介に思い、美姫は明良に助けて――といいたげな視線を送る。
断りたい。面倒なのは嫌いだ。
そう思う彼だったが、秀紀との約束もある。
故に彼は渋面で美姫――と風見達――の下校に付き合う形となったのだ。
その際「き、木原も一緒なのか……?」と落胆した声を上げていたことに、明良は特に興味を示すことはなかったが。
そして帰り道、それは起こった。
彼らの前に、目出し帽を被った男が銃を突きつけ、「大人しくついてこい。でないと撃つぞ」と脅してきた。
明良と美姫、そしてなぜか見崎と榊原は些細な動揺こそすれ、怯えを露わにすることはなかった。
しかし明確な抵抗をするでもなく、彼らは戦慄する風見達とともに、男の誘導するがまま車に乗り込む。
銃を突き付けられたまま、彼らは後ろ手に手を組まされ、四肢を縛られたのだ。
車が止まると乱暴の降ろされ、廃工場の柱に、まとめて座らされた。
――――――――
そして現在に至る。
風見に関わらなければ、こんなことにはならなかったのだろうけれど、いかんせん彼の狙いは美姫にあるようだ。
そのため、彼は風見を見過ごすわけにはいかないのだった。
現状に再び深く息を吐いた明良。
――――その時だ。
「ああ、こっちは万全だ。あとは電話を――」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
風見が雄叫びを上げ、視線を外していた男に突っ込んだのだ。
あいつ、足の縄は……!?
ぎょっとする明良だが、どうやら風見の縄だけ緩かったらしいということが予想された。
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