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突き飛ばされる男。それに伴い、風見もその場に倒れこむ。
「ぐぅっ……!?」
「ぅわっ!」
突進された男が「このガキぃ!!」とすぐさま起き上がり、銃口を向ける。――――勅使河原に。
美姫達はぎょっとしたが、明良、そして銃を突きつけられている勅使河原自身は動じなかった。
それがその男の――『あの時』の残党の手口だからだ。
見せしめとして赤の他人を殺し、恐怖感を植え付けるというもの。
風見はというと、倒れた時に頭でも打ったのか、呻きながら頭部を抑えている。こっちの状況には気付いていないようだ。
またかよ、あいつ。
明良は胸中で風見を詰る。
風見は何も変わっていなかった。
『あの時』から何も……。
勅使河原は諦めたのか、すぅっと目を閉じている。
それを見た榊原が騒ぎ出す。
「ちょっ、なんで勅使河原を打とうとしてるのよ!?」
「うるせぇ!! この正義の味方様に『また』教えてやんだよ。自分の行いが何を生むのかをさぁ!!」
男が引き金を引いた――瞬間、明良はかばうように勅使河原の前に転がった。
縄を外し、四肢が自由になった状態で。
「木原くんっ!!」
珍しく美姫が取り乱す。
衝撃を受け、そのまま転がる明良。
止まると、何事もなかったようにムクリと起き上がる。
「なっ!? てめぇ……!!」
男が苦渋の声を上げる。
明良は身体に巻きつく縄の残りを払落し、ブレザーのボタンを外して、その下を見えるようにした。
「縄はナイフで切った。そンで、下に防弾チョッキ着けてンだよ」
周囲の男達が動揺を露わにする。
当然だ。普通の男子高校生が下にそんなものを着けていると、誰が予想できようか。
しかし、勅使河原に銃口を向けた男だけが、別の驚きを見せていた。
「てめぇ……まさか!?」
「よぉ、覚えてたンかよ。バスジャックの次は誘拐たぁ、とことん救いのねぇ屑だな」
言いながら、明良はチョッキの下に手を入れる。
「大方、上鷺宮の娘を誘拐して、身代金でも要求でもしたンだろ?」
取り出したのは拳銃だった。
男達にも、風見の取り巻き達にも動揺だ走る。
明良は、
「風見ぃ!!」
今も尚倒れたままの風見に言う。
「てめぇは結局そンなもンなンだよ!! 力もねぇくせにわけのわかンねぇ正義感働かせて、それが周りに迷惑をかけるっておもわねぇのか!?」
風見が僅かに顔を上げる。
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