130人が本棚に入れています
本棚に追加
「所詮力のねぇ正義なんてものは、傍迷惑な『悪』でしかねぇンだ!!」
同時に引き金を引く明良。
勅使河原に銃口を向けた男――の隣にいる男が仰け反り、倒れる。
榊原が小さな悲鳴を上げるが、打たれた男からは赤黒い液体が流れてこない。
「ゴム弾だよ。死にゃしねぇが、当たるとかなりいてぇぞ?」
続いて明良は引き金を二度引いた。
最初の男同様に、打たれ、倒れる男達。
恐怖に当てられたのか、ずっと後ろの方にいた男が、奇声を上げ、突進してきた。
男が「おいっ、落ち着け!!」と呼び止めるが、既に遅い。
突進を紙一重で躱した明良は、そのまま右脚を高々と振り上げ、それを男の背に叩き落とす。
その場に倒れた男は「ぐぅっ」とうめき声をあげ、四肢をぐねぐね動かしている。
それに止めを刺すように、明良は彼の首筋を踏みつけた。
男は動かなくなり、遂に勅使河原に銃を向けた男――残党一人となった。
「ぁ……チィッ!! 動くな!! この女がどうなって――」
美姫に銃口を向けた残党が脅しをかける。
が、その脅し文句が終わる前に明良は引き金を引いていた。
残党の右手が弾かれ、銃が宙を舞う。
それを拾おうとする残党だが、三神がタイミングよくそれを蹴り飛ばしたおかげで、銃はさらに残党のもとから離れる。
遠ざかる銃を茫然と見つめていた残党に、明良が走って距離を詰めた。
そのまま羽交い絞めにし、動きを封じる。
「ぐ……はなせぇ!!」
「離すかよ屑が」
怒号を上げる残党の額には汗が張り付いており、焦っている――身の危険を直感しているのが窺えた。
「てめぇ、ほンっとにつまンねぇ手口を使うよな。なンだそりゃ。てめぇの仲間が決めたことか?」
「ちょちょ、待ってくれ!! 俺は脅されたんだよ、そいつらに!!」
「そぉやっててめぇは、一人だけ逃げるンだろぉが」
「ぬっ、ぐぅ……た、頼む! もう二度と手は出さないから、助けてくれ!!」
悲痛な声を上げる残党。
明良はそれを、無機質な眼で見ていた。仕事の時に見せる、殺し屋『木崎』の眼で。
「てめぇ……上鷺宮に喧嘩売った意味、分かってンのかぁ?」
「は……は?」
「そこの娘に手ぇ出した屑の末路は全員おンなじだよ」
眼光同様、無機質で冷たい声色に、残党はガタガタ震えだす。
「まぁ、あれだ」
「ひ……たす、け」
「沈没と人柱。嫌いな方を選ばせてやるよ」
最初のコメントを投稿しよう!