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すると、風見が
「こいつら……委員長が目当てで……?」
ようやく立ち上がりながら言う。
その眼には、憤怒が宿っていた。
「てめぇ! それでも人間か!?」
風見の批難に、残党の震えが止まる。
明良もその無機質な眼を彼にやった。
残党も明良も口を歪ませている。
もっとも、その意味合いは正反対なのだが。
「随分場違いな事言うじゃねぇか、風見」
「は……?」
態度を瞬時に変えた二人。
その理由が分からず、風見は呆けた面持ちになる。
すると残党が、
「へっ、てめぇにだけは言われたくないね」
と下卑た笑みを浮かべ、言葉を投げる。
榊原がその言葉に納得がいかなかったのか喚き始めるが、三人の耳のは入らなかった。
ただ、緊張を浮かべた勅使河原を明良だけが見ていた。
残党は続ける。
「さっき、『また』教えてやるつったけどよぉ、内心呆れたぜぇ?」
「な、なにがだよ……」
「はっ、なんだよ。都合の悪いことは覚えてないのかよ。こいつはきっちし覚えてるってのによ」
残党の口は妙に饒舌だ。
最早助かる見込みがないから、やけにでもなっているのか。
「そうだそうだ、『あのガキ』……今は病院のベッドで療養だっけか」
「なんの話だよ!?」
「てめぇがガキを大けがに至らしめたって話だよ」
「ぇ…………?」
「おい」
すると風見が返すよりも速く、残党の脛に爪先を打ち付ける。
「あがっ」と悲鳴を上げる男の耳元に彼は囁く。
「勘違いすンなよ。『あの子』が今も寝てンのは、てめぇらのせいだろうが。てめぇらだ大人しく風見を打ってりゃ、しまいだったンだ」
明良が男の首にかけていた手に力を入れる。
「まっ、これ以上生かすのもあのガキにわりぃか。寝てろ」
ゴキッと鈍い音が辺りに小さく響くと、残党が崩れた。
彼は徐に懐から携帯を取り出し、「もしもし警察ですか?」と連絡する。
それを終え、通話を切った彼は美姫らに振り返り、
「これから警察が来るけどよぉ、てめぇらなンも話すな。さっきまで気絶してたことにしとけ」
―――――――
その後警察が駆け付け、事態は収拾した。
その警官たち――そして先ほど明良がかけた通話先が警察が偽物であることは、彼と美姫しか知らない。
彼ら五人は、上鷺宮にしっかり『処理』されたことだろう。
もっとも、事情聴取をせずに連中を連れて行く警官に風見達は疑問を抱かなかったが。
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