勅使河原椿 ~過去~

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明良の表情に、動揺という形で感情が戻る。 美姫はそれに構わず続けた。 「その男子達ね、わたしによくちょっかいを掛けてくる男子達でね。その日以降も、その男子達がわたしに係わってこなくなったの」 まさか、見られていたとは……。 胸中で歯噛みし、明良は美姫に問う。 「それで、オレに対して好意的になったと?」 こくんと頷く美姫。 そんな彼女に、明良は冷たい言葉を突きつける。 「それはおっさんに頼まれただけだ。別にてめぇに気があったわけじゃねぇ」 言った本人からしたら、それなりに冷たい言葉だったはずだ。 しかし、彼女にとってはそれは予想の範疇だったようで「知ってたわ」と即座に返した。 「……益々わかンねぇ」 「別に、理由なんてどうでもよかったの。わたしの味方でいてくれる。それだけで、十分過ぎるの」 「…………」 「率直に言うね。わたしはあなたともっと仲良くなりたい。今彼氏彼女の関係を求めたりしないけど、とにかく、友達という間柄にはなりたい」 「で、友達の過去を友達じゃねぇ奴が知ってンのは気にくわねぇ、と」 再度こくんと頷く美姫。 正直、彼女の頑固っぷりを秀紀から聞かされていた明良は、彼女が決して揺らぐことはなく、譲らないと思っていた。 別の奴から聞かされるくらいなら……。 「チッ、わぁったよ。話してやる」 明良は腹を据え、美姫と向き合う。 美姫の表情にも、感情が戻る。 それは、期待のなかにも確固とした覚悟を感じるものだった。 彼は、その場で話を始めた――――……。 ―――――――― 「オレだって、いや、オレ達だって、初めからここまで不幸たらたらじゃなかったンだよ。 「そぉだな……、小学、二、三年くれぇの頃だったかね。それまでは、普通に両親にも恵まれて、人並みの幸せってやつぁ実感してたぜ。 「まぁ、そンなもン、あっさりぶち壊れたンだがな……。 「それ自体はそこまで珍しくもねぇ、交通事故だよ。 「留守番してたらな、いきなりしらねぇおっさんが家に入ってきて、その事を伝えらえた。 「姉さんはぼろぼろ泣いてたが、オレは実感が沸かなくて、ただ目の前の現実が受け入れられなくて、茫然としてた。
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