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「生活費はおっさんに出してもらって、その金額分を借金として仕事え返すって制度だったよ。
「酷かったもンだぜ? 八歳児に人殺しを躊躇なくやらせンだからよ。
「つっても、流石に一人じゃ無理だったから、教育も兼ねて、先輩の仕事に助手として付き添った。
「その先輩も、当時は十八歳くれぇだったかな。
「その人は……もう死ンじまったけどな。
「いろいろあンだよ。こればっかしはまだ言えねぇ。
「まぁその先輩のおかげもあって、中学校に上がる頃には立派に一人前やれてたよ。
「人を殺すのは辛くなかったかって? つれぇに決まってンだろぉが。
「悪人を、塵として見ねぇとやってらンなかった。
「実際、それでも何度か死に掛けたけどな。大怪我も負った。
「はっきし言って、今日まで五体満足でいられたのは、先輩のおかげだな。
「とにかく、『裏』の世界で必死に生きてきた。文字通り死にもの狂いでな。
「オレが一人前になる頃には、姉さんはライトノベルを書き始めてたな。
「その仕事に付き合うこともあったな。オレが外でて取材、姉さんがそいつを元に執筆。
「学校では、てめぇの言う通りてめぇを守って。放課後は仕事。
「それの繰り返しだったよ。
「惰性で続けたから、中学に上がる頃にはもぉ抵抗はなかった。
「完全に、仕事として割り切っていた。
「オレにとっての最大の不幸は、両親が死んだ後の生活では二つだな。
「どっちも、大事な人を…………。
「まぁ、これでオレの不幸から始まる最低最悪醜悪なサクセスストーリーはしめぇだ。語り終わり。完。
「って、おいおい……。
――――――――
「なンでてめぇが泣いてンだよ……」
「……っ、ひっく……ぐっ……ずっ……」
明良の言うとおり、美姫は泣いていた。
冷めきった瞳から大粒の涙をぼろぼろと。
半ば呆れ気味にハンカチを取り出し、彼女の顔面に押し付ける。
絶え間なく流れ続ける涙や鼻水を拭い続け、美姫が落ち着くのを待つ。
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