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「あれっ……風林火山のお話、連載休止中なんだね」
「……孔子も年だから」
「……」
イマイチ噛み合わない会話も気にならない程に、伊達君は仰向けのままくすんだ教室の天井を見つめていて。
あたしはそんな彼をぼんやりと眺めながら徐に漫画をぱらぱらと捲った。
「そうだ伊達君……パン、食べる?」
実は朝、登校中にお気に入りのパン屋さんで買ってきてた。
「何。持ってるんじゃん」
伊達君は寝転がっていたマットから瞬時に身を起こすと途端に笑顔になって、あたしの差し出したパンの袋を奪い取る。
そのままガサゴソと袋の中を物色してパンを一つくわえた。
「……ん」
パンを頬張ったままでもう一つのパンをあたしの前に差し出す仕草。
いつもなら真っ先にメロンパンを奪取する伊達君が、今日は珍しくあたしにメロンパンを譲ってくれた。
「……えーっと。くれるの?」
彼が背にした窓から見えるブルーが薄く低くなる。
もう
季節は冬なんだ。
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