1st.moment

14/14
14039人が本棚に入れています
本棚に追加
/806ページ
「……偶像崇拝?」 「何それ」 「センパイはただの“憧れ”な訳?」 「んー……そうとも言う」 あたしの答えに伊達君はふっと小さく溜め息を吐いた。 もう真田センパイを見られる時間は終わって。 愛先生も保健室の奥へと姿を消したのに。 それでも彼は窓辺から動く様子もなく、ただ流れていく雲を眺めていた。 あたしもつられて窓辺から動けないでいる。 「……上杉さんって、友達いないだろ」 「な、なんで知ってるのっ?」 「なんとなく」 伊達君はあたしをからかうように楽しそうに笑った。 あと二ヶ月。 春が来たら、センパイも愛先生もこの学校から居なくなる。 伊達君が見つめる先。 あたしが見つめる先。 この空き教室にこうして今日も来てる理由。 あたしと彼がこの教室に居る意味を、もう一度深く考えた……。 .
/806ページ

最初のコメントを投稿しよう!