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「……偶像崇拝?」
「何それ」
「センパイはただの“憧れ”な訳?」
「んー……そうとも言う」
あたしの答えに伊達君はふっと小さく溜め息を吐いた。
もう真田センパイを見られる時間は終わって。
愛先生も保健室の奥へと姿を消したのに。
それでも彼は窓辺から動く様子もなく、ただ流れていく雲を眺めていた。
あたしもつられて窓辺から動けないでいる。
「……上杉さんって、友達いないだろ」
「な、なんで知ってるのっ?」
「なんとなく」
伊達君はあたしをからかうように楽しそうに笑った。
あと二ヶ月。
春が来たら、センパイも愛先生もこの学校から居なくなる。
伊達君が見つめる先。
あたしが見つめる先。
この空き教室にこうして今日も来てる理由。
あたしと彼がこの教室に居る意味を、もう一度深く考えた……。
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