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僕は、主人が大好きだ。
型としては、二年前の発売でもう売られることもないと、生まれ変わるか、どこかに流されてしまうんだろうと思っていた。
外の世界を見ることもなく、体をばらばらにされて、新しい自我として生きていくんだって。
そんなときだった、彼女とあったのは。
なかなか携帯使いの荒い、物持ちのいい子だった。
彼女は「よろしく」と笑うと真っさらなメモリーの僕をすぐに彼女色に染め上げてしまって。
とにかく、使われるだけの僕が、厚かましいかもしれないけど…、僕で幸せになってほしいと本気で願っていた。
僕は、本当に、しあわせものだった。
彼女のために何でもするぞって意気込んでいたのに、だんだん眠くなって、体に力が入らなくなって…。
やだ、こんなの、知らない。
せっかく、買ってもらえたのに、僕、どうしたんだろう。
愛想、尽かされたら、どうしよう。
泣きそうなくらい辛くて、どうしたらいいかもわからなくて。
それなのに彼女は落ち着き払っていた。
その表情が怖くて堪らなかった。
見捨てられる、僕は役立たずなんだ。
何度も胸の中で繰り返した。
「あ、充電しなきゃ」
彼女はさも当然であるかのように言ったけれど、僕は、充電を知らなかった。
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