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ぬいぐるみが散乱したベッドの向こうに、あいつは居た。
どうやら、ベッドのわきに付いてているコンセントに繋がっているようだった。
動けないことになのか、むすっとしているのが印象的だった。
気付くと、彼女はパソコンに向かっていて、僕とあいつが向き合っていた。
「あの…初め、まして」
今にも落ちてしまいそうな意識をつなぎ止めて、なんとかそう挨拶した。はずだ。
チッ、と不機嫌そうなそいつから聞こえた舌打ちに、なんとなくイラッとした。
「充電か、しかたねぇ…こいよ」
もう動く体力すら残ってない僕はぐったりとしたまま首を横に振った。
苛立ったような声が疲れた体によく染みて、言い返す気も起らなかった。
垂れたままの僕の腕をそいつはだるそうにつかむと、そのまま僕を自分のほうへ抱き寄せた。
「な、に…?」
「お前、倒れる気かよ」
本当に死ぬぞ、と脅されるようにして、僕はそいつの腕に抱きすくめられていた。
「や、やだ…っ離して…っ」
「これも仕事なんだから我慢しろ」
その時のそいつの顔が、忘れられないくらい、切なそうで、僕も、切なかった。
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