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「ゆきぐに」
いつの間にか、こんなところまで来てしまった。
軽い気持ちだったが果たしてすぐに帰宅するつもりだったのだろうか?
それとも全てを捨て去って、たとえホームレスになっても良いぐらいの決意の元の出発だったのか?
自問自答する時点で深い考えなど無かったのは明白じゃないか。
愚かさに苦笑するしかない。
回顧すると人生ずっとこんな感じだったように思えて涙が勝手に流れ出す。
どこまで弱体化して行くつもりなのか!
自分を叱咤してみても、その声さえ胸中で空回りするほどか細い。
冷え切った身体を温めてみれば何か変わるかも。
辺りを探すと寂れた民宿が目に入った。
門をくぐり玄関を開いて思い出した。
そこは故郷の実家だった。
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