攘夷

10/11
前へ
/70ページ
次へ
 力の無さを痛感した。  力が無ければ、いくら説こうが、いかに頑張ろうが、国を動かす事は出来ぬ……。  心に一瞬の闇が走った。  吉田東洋が消えれば……。  この頃半平太は、反東洋派の上士に「一人東洋さえ無ければ、他の輩は一事に打ち潰すこともできよう」と吉田東洋暗殺をそそのかされていたのだ。  しかし、半平太の気持ちを見透かした龍馬は言った。 「アゴ、何を考えてるがよ」  半平太は胸ぐらを掴まれた。 「人を斬ったら、斬られた者や、その家族が悔しい思いをするだけじゃ。憎しみは憎しみしか生まん!!」  半平太はわかっていた。  ところが、だからといってどうする事も出来なかった。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加