幕末の才器

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 この仕事はとても危険を伴う任務であり、土佐の海は普段は温厚だが、一度荒れるとその波は激しく荒れ狂い誰にも手を付けられなくなる。  このような命がかかる仕事は、無条件で郷士がやらされた。  この土佐には古くから独特の身分差別があり、大きく分けて上士と下士にわかれていた。  上士は家老、馬廻組、小姓組など上級武士として扱われ、下士は郷士、用人、足軽など下級武士として扱われた。  半平太の武市家は武士の中では下級武士である白札郷士という身分であり、上士からの命令は絶対であった。 「郷士なぞ虫けらじゃ」  ものごころ付いた頃より、上級武士の上士にいわれてきた言葉だ。  言葉のとおり、郷士は着るものの差別はもちろん、下駄を履くことも日傘を差すことも許されず、どんな理由があれど上士に手打ちにされても逆らうことすら許されない「斬り捨て御免」という制度があった。
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