一章

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「バカだな…。お前、本当にバカだ。 早くいけよ」 さよならは無かった。 また会う約束などしない。 ただ、「生きる」と言ってくれた気がして、 ただ、それが嬉しくて、泣いた。 薫に腕をひかれながら―。 「ねぇ、どーだったの?お母さん、元気だった?」 薫の無邪気な質問に、俺はまだ作り笑いも出来なかった。 「いなかったよ…」 涙をこらえるにはまだ幼かった。 どうしようもなく泣きたくなった。 叫びたかった。 でも、出来なかった。 そう、まだ信じられなかったから。
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