一章

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もともと薫はバカみたいに体力あって、 まあ小学生の男女の体力差なんて殆ど無いのだろうけれど… とりあえずすごい奴だった。 「…それから」 病院を抜けようとした所で、薫は急に立ち止まった。 「―ウワッ!」 ぶつかりそうになりながら踏ん張った。 「それから、泣きたいときは泣いていいんだよ? 僕は、家族を失った悲しみなんか知らないし、気持ちなんか分かんない。 でも、でもね…鳴海が悲しいのは解るよ?」 ―どうして忘れていたのだろう? 薫のその顔は“女の子”だった。 誰より心配性で、人の事ならすぐ泣く奴。 確か、あの時だって、薫は泣いていた。 涙流しながら、言ってくれたんだよな…。 「鳴海は、独りじゃない」 ってさぁ…。
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