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「ねぇ!そろそろ名前・・・」
「うざい。」
「教えてくれても!」
「黙れ。」
「だって同じ・・・」
「うせろ。」
何度私が冷たい言葉を発しても、全く私の傍から離れようとしない。
一体目的は何?お金?お金なの?
財布から10円を取りだそうと鞄に手を伸ばしたところで、自分が現実逃避をしている事に気づき手を止めた。
何だか本当に疲れてきた・・・頭痛い。
「入学式って緊張するよね~!!俺さ、今日が楽しみでなかなか寝れなくて・・・」
「あんたさ、さっきから何なの?」
「・・・・・・え?」
「私はうざいって言ってんのよ。いい?関わるなってこと。名前なんて学校に行って光陽中学校の生徒に『ロボットみたいな女』って聞けば分かるから。もう話しかけないで。じゃぁ」
本当に久しぶりにこんなに声を出したような気がする。
ずっと男から顔をそらしてきたが、今回だけはしっかりと目を見て話した。
ここまで言って分からなければもう警察を呼ぼう。新しいストーカーと言えば納得してくれるだろう。
私が言ったことが堪えたのか、男はピタッと足を止めた。
さっきまでのへらへらした顔とは違い、少し真面目な顔にも見える。私の見間違いかもしれないけど・・・。
でもこれで関わらないでくれるならそれでいい。さっさと一人で学校に行こう。
男に背を向けていつも通りの歩幅で歩き始める。
これでこの男とも関わらなくて済む。そう思ったら少し嬉しいかも。
そう思った時、さっきまでのうるさい声とは違うトーンで男が話し始めた。
「牧村雫(マキムラ シズク)さん・・・だよね?」
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