67人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の姿を見た紅竜はたちまち逃げていく。
竜は自分では倒せない相手が現れると、逃げ出してしまう。
残ったのは、一際(ひときわ)大きな紅竜だった。
赤黒い鱗は大きく、全身にある突起はナイフのように鋭い。
2m以上もある翼にある傷は猛者(もさ)であることを物語る。
翼の中央に見なれた人影が姿を現す。
紫色の髪は前よりも伸びており、肩についている。
紅(あか)と蒼(あお)のオッドアイは見た者に恐怖を与える。
『久しいな、リュウト。やっと君を手に入れられる。欲しくてたまらないその力……もう13年も待った。そろそろ限界だよ。答えをくれないかなぁ?』
高めの声に狂気(きょうき)交わる。
俺は結界に体を当てると、穴が開く。
その穴を通り、サクリファイアスの紅竜の前に着地する。
一旦、魔法で人形に戻る。
夕日は沈み、空には満月がおぼろげにひかる。
『答えは決まっている。』
普段より低い声で語る。
サクリファイアスは笑みを浮かべ、満足げに俺の言葉に耳を傾ける。
『…ない。』
微かに響いた声は夜風(よかぜ)により消えていく。
『聞こえないよ、さあ言って。君が俺の所へ来ると。』
サクリファイアスは歓喜(かんき)の声を出し、俺の言葉を待っている。
最初のコメントを投稿しよう!