再戦

17/33
前へ
/71ページ
次へ
俺の姿を見た紅竜はたちまち逃げていく。 竜は自分では倒せない相手が現れると、逃げ出してしまう。 残ったのは、一際(ひときわ)大きな紅竜だった。 赤黒い鱗は大きく、全身にある突起はナイフのように鋭い。 2m以上もある翼にある傷は猛者(もさ)であることを物語る。 翼の中央に見なれた人影が姿を現す。 紫色の髪は前よりも伸びており、肩についている。 紅(あか)と蒼(あお)のオッドアイは見た者に恐怖を与える。 『久しいな、リュウト。やっと君を手に入れられる。欲しくてたまらないその力……もう13年も待った。そろそろ限界だよ。答えをくれないかなぁ?』 高めの声に狂気(きょうき)交わる。 俺は結界に体を当てると、穴が開く。 その穴を通り、サクリファイアスの紅竜の前に着地する。 一旦、魔法で人形に戻る。 夕日は沈み、空には満月がおぼろげにひかる。 『答えは決まっている。』 普段より低い声で語る。 サクリファイアスは笑みを浮かべ、満足げに俺の言葉に耳を傾ける。 『…ない。』 微かに響いた声は夜風(よかぜ)により消えていく。 『聞こえないよ、さあ言って。君が俺の所へ来ると。』 サクリファイアスは歓喜(かんき)の声を出し、俺の言葉を待っている。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加