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身を包むのは母に借りたスーツ。
顔には普段はしない、大人っぽい化粧。
手には父のお古のアタッシュケース。
「お、おっきいな…」
目の前には、大きな大きなビル。
行き交う人は、スーツを着込んだ隙のない大人達。
「…無理…」
絢子、早くも戦意喪失です。
「あっら~?お嬢ちゃん、こんなとこでどうしたの~?」
「ぎゃあああ!?」
不意に声をかけられ、肩を叩かれた絢子は思わず悲鳴を上げて振り返る。
目の前にはまた壁だ。
今度の壁は、淡い水色。
(この展開はっ…)
昨日やった、ならば目の前のこれは壁じゃない。
けれど、恐る恐る見上げた顔は逆光で見えなかった。
「「ぎゃあああ」って、オジサン傷つくよ…」
ワザとらしく肩を落とす男に、絢子は慌てて頭を下げる。
「わー!すいません!すいません!!びっくりしただけなんですっ!!」
「あー…、そう…」
平謝りする絢子を、男は首を掻いて見下ろしてきた。
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