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「こんな歳になるとさ、辛いのも、痛いのも、知ってる分、すぐに逃げること考えちゃうんだ。…特に恋愛なんかは…」
驚きで目を丸くする絢子に、誠一はあの慈しむような優しい目を向けてくれる。
「こんなオッサンが何言ってんだ、って笑ってくれてもいい。でも聞いてくれ、俺は、君が、絢子ちゃんが好きだ。心から守りたいと思うのも、抱き締めたいと思うのも、絢子ちゃんだけだ」
その言葉は、深く、深く、心に染みて、絢子の瞳から涙を零す。
そして、絢子は口を開く。
「私も…今日で終わりだと思ったら、胸が痛くて、心が痛くて、彼氏と別れたばかりなのに、それにこんな子供が何言ってるんだって笑われるかもしれません。…でも、私は、私も誠一さんが好きです」
「絢子ちゃん…」
誠一は嬉しそうに笑って絢子の涙をすくうと、すくった涙に口付け跪く。
「橘絢子さん、俺と結婚を前提にお付き合いして下さい」
差し出された右手。
絢子はそっと自分の左手を乗せる。
「はいっ!」
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