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ピピピ・・ピピピピピピ・・!!
目覚ましのうるさい音がする。
朝か・・
手を伸ばしていつものように止める。
ただ何か腕が伸ばしづらい。
そんな違和感に何か引っ掛かりを感じながら僕はベッドから起き上がった。
今日はいつもより気持ちよくすっきりと起きられた。何故だろう。
まぁ、いいか。頭をかきながら思う。
いつもと変わらぬ殺風景な部屋。
ふと目を移せば床にはスクールバッグから道具が飛び出て散乱している。
拾おうと思って床に出した足が痛い。
そういえば何か・・昨日・・あったような・・
そこまで考えて、僕は思い出した。昨日あったこと全て。
直の来ないライブ
静かな道路
夜空
星
風が吹き上げる
女の揺れる髪
浮き上がった細い体
虚ろな目・・
昨日のことは全て夢だった。そう思いたいのに湧き上がる記憶は色濃く鮮明で、引っ張ったときの彼女の手の柔らかさや転がったときの彼女の重み、口の中に入った砂のじゃりじゃりした感覚が今さっき起こったことのように思い出せてしまう。
なにかぞっとする。あの時僕は非現実的なあの光景を懐かしいと思った。隠さなければと必死になっていた。
なんなんだ
このイメージを振り払いたくて僕は勢い良く立ち上がった。少し足に痛みがビリりと走った。痛みの走る左足を見て愕然とする。
昨日のジーンズを履いたままだ。上半身にあちこち触れながら鏡を見てみれば上もそのまま。
よれたシャツが汗臭い。
左頬に擦れた赤い傷。そっと触れてみればピリと痛む。
・・・本当に起こったことだったんだ。昨日全てが。
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