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その後、野崎さんは小山さんに電話をして、僕がサポートメンバーになることを承諾したと伝え、詳しい今後の活動の事は、実際に会って話したいと、来週会う約束をして電話を切った。
話をしている間、受話器の向こうは見えなくても、小山さんが笑顔だったのが何となく目に浮かんでいた。
帰り際、これを聞いとけと、野崎さんは小山さんのバンド“black tiger”のデモテープを渡してくれた。
見た目は強面だが、口下手のくせしてお節介で熱いなが、野崎さんの良いところである。
それが、長年こんなボロCD屋に通う理由だ。
帰り道、僕は自転車を停めて、携帯を取り出し、着信履歴の奥底に埋もれた番号に電話をかけた。
『はい』
「あっ、もしもしお久しぶりです。信です」
『久しぶり。どうしたの?』
「いや、あのその……」
『ん?』
「こ、今夜飲みに行きませんか? 僕、奢りますし。ちょっ、ちょっと話したい事あるんで……」
『ふぅん』
「ダメ……ですか?」
『ううん。行きましょ』
その日、テレビの天気予報で春一番が吹いたと伝えてました。
でんでんむしむし end
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