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「それにこんなことしやしないよ」
ワサビーナ太夫の声も地声には戻っているものの、どこか母親の面影をのこす優しい声だった
花椒はなにも言わず、ワサビーナ太夫の手に頬を寄せ、そっと両手を添える
「私、太夫のこと好き
でも、カラシネア様も大好き
私が生きているのもカラシネア様が育ててくれたから
町が荒れて、ママがいなくなって
怖かった……
独りで何していいかわからない私に食べ物くれて、寝るところくれたのよ
なんでもない私が王宮にいられるのもカラシネア様がいてくれるから
どんなことされても嫌いじゃないよ」
ふと、ワサビーナ太夫が穏やかに微笑む
「アンタの気持ち、レディに伝わればいいだけどね」
「はい……」
二人はニコリと微笑みあい、花椒はレディ・カラシネアの部屋に向かっていった
「何をされても“母親”なのかね~
大好きか……」
ふと、立ち上がるとワサビーナ太夫は花椒の背中を複雑な面もちで見送った
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