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いくら母親でも随分ひどい仕打ちだと叶恵は思った
自分の親もなかなか最低だと思っていたが、公共の道で誰かがみている前でさすがに叩かれた記憶はない
薄く冷ややかなするどい眼光の眼差しをもった先ほどの母親の目には、まるで自分が映っていないように思えた
目の前にいる少女は今にも涙がこぼれ落ちるのをこらえているかのように歯を食いしばり、叩かれた頬を押さえている
ふと叶恵は、幼い頃何かに入賞した賞状を嬉しくて母親にみせた記憶を思い出す
当時母親は独りで事業を立ち上げたばかりで、叶恵には目もくれず、話をまともに聞いてもらえた記憶がない
そんな母親の気を引きたくてなにかと話かける叶恵を煩わしく思ったのだろう
嬉しさのあまり、つい母親の後を何度も追いかけてしまったのだ
叶恵は賞状をみるよう母親にしつこくせまってしまい、最後にはその場で賞状を取り上げられ見るも無残に破かれてしまったのだ
それ以降、叶恵は母親と必要最低限な会話しかしなくなった
母親との溝はそのときから生まれ、今も埋まることはない
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