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「ねーねー、リアたん聞いてるー? 勇者である俺的にはさ、やっぱりモチベーション重要だと思うのよねー」
街道を、変態と女騎士が歩く。
ただ無言を貫くリアと、周りでペチャクチャと騒ぎ立てる禁児。
出発前から誰もが予想していたであろう構図が、今まさに完成していた。
「だからさ、リアたんのスレンダーボディでさ。俺に色々ご奉仕とかさ、してくれればさ、俺の異世界パワーも最高潮になると思うんだよね、どう? どう?」
「……いい加減に黙らないと、切り刻みますよ?」
「あれ? あれあれ~? そんなことしちゃまずいでしょ~? 俺、勇者ぞ? 世界の命運握っちゃってるんだぞ? ね、分かってる? ウヒャヒャヒャ!」
「ああ、姫様……ハトリ様……こいつ、変態の上にクズです。クズ野郎です。もう嫌です、助けてください」
「ほら、何とか言ってくれよ! リアっち~!」
「ひゃああああっ!」
不意に、変態がリアの胸を背後から鷲掴みにする。
「う~ん、胸当て越しでも伝わるこの柔らかい感触……! エレガント! ウヒャヒャヒャ! エレガントだぜええ!」
「……もういいです」
「え?」
リアの声が、真剣な殺意をまとい始める。
思わずリアから離れてたじろいだ禁児に向かって、リアがゆっくりと手をかざし始めた。
「もういいです! あなたを殺して、私も死にます! 食らえ、賽の目切り!」
「うぎゃああああああ!」
街道に、真っ赤な霧が立ち上った。
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