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深夜の宮城(きゅうじょう。みやぎではない)を、夜空に節操なく配置された四十八個の月が照らす。
窓からミラーボールのように降り注ぐ月の明かりを頼りに、一人の少女が階段を駆け上がる。
長い黒髪がリズミカルに揺れ、汗が滲む身体を鼓舞するようにその身を叩く。
少女が目指すは王の間。
そこに待つのは、この国に残された最後の希望だった。
「姫様! 大変です!」
金銀で彩られた豪奢な扉を開けば、真っ赤なカーペットが敷き詰められた広い部屋。
その奥、堂々たる佇まいで玉座に腰掛けるは、まだ十歳くらいと思しき少女。
彼女こそが、今のこの国の支配者であった。
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