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「リア、ご苦労様ですの。まだお前は見習い騎士の身ながらよく働いてくれますのね……。しかし、この国も最早……」
――ジリリリリリリ!
突如、けたたましいベルの音が室内に響き渡る。
何事かと狼狽える姫とリアを余所目に、ハトリが懐から、巨大な目覚まし時計を取り出した。
「おお、ついに時間がきましたか!」
「きましたか! じゃ、ありませんの! どうやって懐にそんなもの隠してましたの! お前の懐は四次元ですの!?」
「私の胸は四次元のように、何でも包み込んであげられるのですよ」
「あら素敵。私、妊娠しちゃいます」
「無闇にクサいセリフを吐くなですの! リアも乗るなですのっ!」
リアとハトリを交互に見ながら、ツッコミに勤しむナナカ姫。
そんな様子を見てひとしきりニヤニヤと笑っていたハトリが、ゆっくりと口を開いた。
「まあ、こまけえことはいいんです。大事なことは、ついに召還球の魔力が貯まったということですよ」
「召還球……ってなんですの?」
首を傾げるナナカに、ハトリがため息を吐いた。
「全く、姫なのですからそれくらいは知っておかなければ。召還球とは、異世界から勇者を呼ぶ魔法アイテムです。600年前に魔王を封印した時にも、これが使われたのですよ」
「あ、聞いたことありますの! なんでも、一度使ったら、もう一度使えるだけの魔力が貯まるまで600年かかると聞きましたの!」
「そういうことです。そして、その魔力が今、ついに貯まったということなのですよ」
ハトリの言葉に、失いかけていた希望がまた輝き出した。
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