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「何でっていわれてもな……」師匠は困ったように笑い、「音信不通だった弟子の様子を見に来てはいけないのか?」
音信不通って、とシグはタバコに火をつけないまま眉を寄せた。
「会いに行かなかっただけだろうが。手紙は月一で出してたし、最近忙しかったんだよ」
「教師の仕事か?」
師匠のからかうような視線に、シグは深くため息をついた。
「そうだよ。教えるなんて慣れねぇし、今日だって生徒の使い魔と戦ってきたんだ」
「それはお前に原因があるんだろうな。普通に教師をしてれば使い魔と戦闘にならないはずだぞ?」
「あぁ、もう、うるせぇよ」
この話題が嫌なのか、シグはコップをテーブルに音を立てて置くと、足を組んで師匠を睨み付けた。
「んなことはどうでもいいんだよ。それより……」シグは一拍置き、「身体はどうなんだよ。まだ退院できる状態じゃねぇだろうが」
――師匠の身体に異常が発生しだしたのは数年前。嫌がる師匠を、無理矢理病院に押し入れた記憶は、シグにとって懐かしいようなそうでもないような。
ともあれ、病院に入れた張本人であるシグからしたら、身体が治りきってないのにこの場にいるのは、不機嫌要素になるわけで。
「心配するな。医師にちゃんと許可は貰ってる。それに、あまり長い時間は出てはいけないことになっているからな」
……しかし、フラン達が慌てふためくような状況でも、師匠からしたら大したことではないようだ。
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