114人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
「ふふふ、なかなか面白いものを観せてもらったよ、シグ先生」
「風の精霊王か……」シグはタバコに火をつけ、呟いた。「あんたみたいな奴からしたらこんな試合、お遊びレベルだろ?」
「謙遜しなくていいよ?最後の魔法は、ボクにだってまだ仕組みが分からないし、避けられたかどうか微妙だしね」
ジンはクスクスと笑う。本当に賞賛しているのか、それとも馬鹿する意味をこめてなのか、どちらとも取れない曖昧な笑み。
掴み所のない性格、まさしく『風』だな、と煙を吐き出すと共にシグは感じた。
「……ま、今回は素直に誉め言葉として受け取ってやるよ」
なんにせよ、どうやらジンは敵対するつもりはないようだ、とシグは適当に返しておいた。
「そうしてよ、風の精霊王相手に全く媚びない人間は珍しいんだから」
ジンは再びクスクス笑い、空中で一回転してユリの頭に帰った。
「じゃあねシグ先生。今度はボクともやりあおうよ」
ジンは最後に「またねマスター」と言い残し、姿を消した。
「………」
残されたのはフラン達とシグのみ
フラン達は今だに呆然としたまま、シグを見つめている。
「し、シグ先生……なんというか……」
ようやく、といった形でフランが開きっぱなしの口を動かす。――が、
「待て、話は今度、時間がたっぷりある時にしてやる」
シグがそれを制し、口早に言った
「俺はこれから教室の後始末をしなきゃいけねぇんだ。だから今日は帰れ」
確かに、ツララとの戦闘で教室は壊滅状態だ。結界が張られていたからこそこの程度で済んでいるが、そうじゃなければ学園が倒壊していただろう。
「で、でもさ先生……」
「黙れ、『転移』」
ユリが何かを言おうとしていたが構わず、シグは転移魔法で五人を学園前に送った。
「…………」
残されたのはシグのみ。彼は煙を吐きつつ、土属性は誰が使えたっけ、と自分本位の事を考えていた
最初のコメントを投稿しよう!