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そこには一人の女性がいた。
長身痩躯。壁にもたれかかっているその女性を表すのには、その言葉がよく似合っている。
宙に浮く炎の明かりに灯されたその身体は、腕や足、場所を問わず小さな傷がついているが、中でも目立つのは、首元から覗く包帯だろう。
ダボダボの黒い服で見えないが、包帯は首から下まで続いているように窺える。腰の辺りまで伸ばした、全く手入れのされていない黒髪を垂らし、猛禽類のような鋭い目付きでそれを睨み付けていた。
雷と火の属性を持つイーリに無理矢理教室の処理を押し付け、自宅に帰ってきたシグが見たものは、暗闇の中、炎に照らされていた女性だった。
無論、冒頭に出ている女性である
シグはその女性を視界に捉えると、一瞬目を見開いたが、すぐに元の鋭利な双眸に戻し、ゆっくりと女性の元まで歩いていき、
「こんなところで何してんだよ……師匠」
――師匠。
そう呼ばれて女性は一直線だった口を緩め、自分と大差ない背を持つシグの頭を撫で、
「久し振りだな。あいたかった…………シグ」
懐かしむように、或いは愛おしく、シグの名前を呼んだ。
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