間章と先生の師匠

2/4
114人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
そこには一人の女性がいた。 長身痩躯。壁にもたれかかっているその女性を表すのには、その言葉がよく似合っている。 宙に浮く炎の明かりに灯されたその身体は、腕や足、場所を問わず小さな傷がついているが、中でも目立つのは、首元から覗く包帯だろう。 ダボダボの黒い服で見えないが、包帯は首から下まで続いているように窺える。腰の辺りまで伸ばした、全く手入れのされていない黒髪を垂らし、猛禽類のような鋭い目付きでそれを睨み付けていた。 雷と火の属性を持つイーリに無理矢理教室の処理を押し付け、自宅に帰ってきたシグが見たものは、暗闇の中、炎に照らされていた女性だった。 無論、冒頭に出ている女性である シグはその女性を視界に捉えると、一瞬目を見開いたが、すぐに元の鋭利な双眸に戻し、ゆっくりと女性の元まで歩いていき、 「こんなところで何してんだよ……師匠」 ――師匠。 そう呼ばれて女性は一直線だった口を緩め、自分と大差ない背を持つシグの頭を撫で、 「久し振りだな。あいたかった…………シグ」 懐かしむように、或いは愛おしく、シグの名前を呼んだ。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!