始まりと挨拶

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【クスラス王国】 王が統治するこの国で最も栄えている首都。 その首都の中心街に周りの豪華な屋敷と並び、寂れた家が建っていた。 築何十年かも不明な程廃れた家。大きさだけでいえば周りの家と遜色はないものの、一見取り壊し寸前とも思ってしまうその家は、明らかに場違いな存在だった。 その場違いな家の中のリビング、必要最低限しか置かれていないリビングのソファーに、この家の主、シグは座っていた。 ボサボサで手入れが一切されていない白髪。常に何かを睨み付けているかのような鋭い目つき。背は高く、顔立ちも整っているのだから、磨けばそれなりにはなるはずである。 しかし本人にその気はないようで、よれた黒いコートを肩から掛け、片手に紙を持ちながらタバコをふかしていた。 「教師ね……」 シグは呟きながらタバコに口をつけ、紙に目を走らせる。 「どんな奴がいるんだか……」 シグが眺めるその紙には、『ハクツラ学園』と書かれており、更に下には『教師の依頼』と並んでいた。 シグは何度もその文字に目を通し、はぁ、とため息をタバコの煙と吐いた。 「全く……俺が教師だなんてな……」 どこか自嘲を含んだ言葉を言ったシグは立ち上がり、タバコの火を消した。 「そろそろ行くか」 シグは家を出て、学園に向けて足を進めた。
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