始まりと挨拶

5/15
前へ
/122ページ
次へ
座っていたのは二十代半ばくらいの男性。長い黒髪を腰で束ね、細身によく合う優しげな目つき。だが真っ先に目が向けられるのは琥珀色をした瞳に、尖った耳だろう 男性はー学園長は入ってきたシグを視界に捉えると、ソファーに座るように言った。 「初めましてシグ先生。僕はカール・ロハイド。ここの、学園長を務めさせてもらっています」 カールはシグが座ってから、聞き取りやすい声で言った。 そんな学園長の姿に、シグの抱いた感想はこうだった。 (真面目に見えるが……腹の底では何を考えてるか分からねぇ奴だな) 第一印象は良くないらしい。ともあれシグは軽く会釈をした。 「どうも、初めまして学園長。俺は……って知ってんなら自己紹介はいらねぇな。あんたが俺を教師に雇ったんだろ?」 シグはボサボサの白髪を掻き上げて、鋭い視線でカールを望んだ。 「そんなに敵意剥き出しにしなくても結構ですよ、シグ先生。僕はあなたが優秀だから教師に任命したんですから」 (優秀か、やっぱこいつは信頼しねぇほうがいいな) どこまでいってもシグは印象を良くする気はないらしい。 「優秀ね……まぁ、んなことはどうでもいいからよ、なんで大貴族のあんたが学園長なんてやってるのか、教えてくれるか?」 シグの言葉に、カールは眉をピクッと動かした。 シグの言った大貴族とは、【クスラス王国】に存在する貴族でもより強力な力を持つ貴族のことである。 カールの名前、ロハイドはエルフ一族の大貴族である証。証拠に、エルフの特徴の一つカールの耳は、尖っている。 「なんでと言われましてもね、説明に困りますね」カールは苦笑した。「大貴族ロハイド家の息子とは言っても、僕は次男です。跡取りは兄が引き受けてくれましたし、僕はやりたいことをやってるだけですよ」
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

115人が本棚に入れています
本棚に追加