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座っていたのは二十代半ばくらいの男性。長い黒髪を腰で束ね、細身によく合う優しげな目つき。だが真っ先に目が向けられるのは琥珀色をした瞳に、尖った耳だろう
男性はー学園長は入ってきたシグを視界に捉えると、ソファーに座るように言った。
「初めましてシグ先生。僕はカール・ロハイド。ここの、学園長を務めさせてもらっています」
カールはシグが座ってから、聞き取りやすい声で言った。
そんな学園長の姿に、シグの抱いた感想はこうだった。
(真面目に見えるが……腹の底では何を考えてるか分からねぇ奴だな)
第一印象は良くないらしい。ともあれシグは軽く会釈をした。
「どうも、初めまして学園長。俺は……って知ってんなら自己紹介はいらねぇな。あんたが俺を教師に雇ったんだろ?」
シグはボサボサの白髪を掻き上げて、鋭い視線でカールを望んだ。
「そんなに敵意剥き出しにしなくても結構ですよ、シグ先生。僕はあなたが優秀だから教師に任命したんですから」
(優秀か、やっぱこいつは信頼しねぇほうがいいな)
どこまでいってもシグは印象を良くする気はないらしい。
「優秀ね……まぁ、んなことはどうでもいいからよ、なんで大貴族のあんたが学園長なんてやってるのか、教えてくれるか?」
シグの言葉に、カールは眉をピクッと動かした。
シグの言った大貴族とは、【クスラス王国】に存在する貴族でもより強力な力を持つ貴族のことである。
カールの名前、ロハイドはエルフ一族の大貴族である証。証拠に、エルフの特徴の一つカールの耳は、尖っている。
「なんでと言われましてもね、説明に困りますね」カールは苦笑した。「大貴族ロハイド家の息子とは言っても、僕は次男です。跡取りは兄が引き受けてくれましたし、僕はやりたいことをやってるだけですよ」
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