~東京~

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トントン 応接室の扉をノックする音が聞こえた。 「入れや」 「失礼します」 トラジの一人息子、トラタロウが 黒いアタッシュケースを運んできた。 「テーブルの上に置け」 「はい」 「……で、どうだろ? OKしてもらえんか?極月ちゃん、頼むわ」 トラジが深々と頭を下げる。 「………わかりました。持ち帰ります」 「本当か?良かった!ありがとう、恩に切る! 何か困った事があったらいつでも言ってくれ! おじさん、極月ちゃんの為なら何でもするからな」 「じゃぁ…その時はよろしゅう頼んます。 もう顔上げて下さい!ワテ、困りますさかい」 「いや~、本当に安心したわい。ありがとうな」 今夜は何か上手ぃもん、ご馳走する。 疲れてなければ銀座に上手い店があるけど…どうじゃろ?」 「もちろん行きます!」 「そうかそうか!何か欲しいもんもあったら何でも買うから言ってくれ」 「じゃぁ…ホワイトのポンチョが欲しいな」 「ポンチョ?なんだ?それは」 「ワテが今日来てきた黒の上着どす。 これ秋から大流行してるの」 「若い娘のファッションは、ようわからんな。 100枚でも200枚でも買ってやる」 「あははは。一枚で充分や。 トラジはん、おもろい!」 「若い娘にウケたわい。 今、車回すから出掛けるとするか」 そう言うとソファから勢いよく トラジが立ち上がった。
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