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「誰も見てないから、早く来て?」
「…あっ…」
鞄も彼の手にあって、足もこの通り…
もう一人で逃げる事は出来ないかな…?
私は仕方なく彼の背中に体を預けた。
「…すみません…あっ、でも背中濡れちゃいます…」
私がずぶ濡れだから、途端に彼の背中は水分を吸ってゆく。
「あぁ、だいじょぶだよ。俺のマンションここだから。風邪ひくといけないし、足の捻挫も気になるから連れて行くよ?」
「えっ!?」
彼はスタスタと目の前のマンションに入って行き、エレベーターを六階で降りた。
「心配しないで? 手当てするだけだから」
不安で体が強ばり、つい掴まる手に力が入っていたのが、彼には分かったのかもしれない。
「す…すみません…」
「謝らなくていいよ。ほら、ここだよ」
彼の肩越しに覗いて見ると、黒い大きなドアの前にいた。
そのドアが開かれると、中からは明るい光が溢れてきた。
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