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「いまタオル持って来るよ」
「あっ…」
彼は私の言葉に笑みを残して、また玄関の方へと足早に消えてしまった。
「はぁ…どうしよう…」
ため息と困惑の中で、右足を床につけてみると、鋭い痛みが足首に走る。
左足と比べても、なんだか腫れてきたようで、これじゃあまり歩けそうにもない。
「お待たせ。タオル使って?」
戻ってきた彼の手には、フワフワのタオルが二枚握られていて、そのうちの一枚を私にくれた。
「髪が濡れてると風邪引くよ?」
「あっ…ありがとうございます…」
タオルを受けとると、言われた通りに雫が落ちる髪をタオルで拭った。
「俺は足を…あぁ、少し腫れてきてるね?痛いでしょう?」
私の足元に身を屈めて、痛む右足を包むようにタオルで拭いてくれる。
「はい…少し…」
「我慢しないで?かなり痛むはずだから」
優しく触れるタオルごしの彼の手が、とても温かく感じて、痛みさえ忘れてしまいそうだった。
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